ヤマトシロアリとイエシロアリの加害習性の違いと予防対策のすすめ

シロアリ対策は早期発見して駆除するよりも予防が大切です。

 

 シロアリの多くは人畜無害です。

シロアリは朽ちた樹木を食べて土に還すという大切な役割を自然界の生態系の中で担っています。日本国内には22種類ものシロアリが生息していますが、その大半は住宅を加害することなく、森林内でひっそりと生活しています。住宅を加害するシロアリはわずか4種ほどしかおらず、その中で短期間に甚大な被害を引き起こすのはヤマトシロアリとイエシロアリの2種に限られます。シロアリの多くは人畜無害なのです。

 

 

 高い適応力が仇となったヤマトシロアリとイエシロアリ

住宅を加害するヤマトシロアリとイエシロアリですが、この2種も普段は森林内に棲息し、立ち枯れした樹木や倒木を食べて土に還すという役割を他のシロアリと同様に全うしています。違うのは環境適応能力の高さで、森林から遠く離れた街中でも朽ちた木と水さえあれば大家族をつくることができます。事実、大阪市内のど真ん中、御堂筋の銀杏並木にはイエシロアリが棲息しています。ヤマトシロアリとイエシロアリには森林の肥えた土にも澄んだ空気にも執着も無ければ未練も無く、子孫を残すためならアスファルトでもNOxでも構わず己の生活環境は問わないのです。ヤマトシロアリとイエシロアリの恐るべき繁殖への執着と高い適応力が仇となり古今東西より忌み嫌われているのです。

 

 

 空と地中から忍び寄る侵入者

ヤマトシロアリとイエシロアリは大きく2つの手段を使って住宅内へと侵入します。
1つは空から。羽アリとなって飛来し、連れ添うパートナーを見つけた後、そろって湿り気のある木に潜り込みます。飛来するシロアリの羽アリにはのちに女王となるメスと王となるオスが混在しており、近親交配を避けるため異なる家庭で育った異性を見つけて夫婦となり、協力して巣づくりを始めます。初めに巣をつくる「木」は様々で、庭木の切り株、庭木の支柱、柵、枕木、門柱、ウッドデッキ、玄関ポーチ柱、工作の端材などほんの小さな木材でも雨に濡れたり接地したりして湿っていれば巣をつくることができます。
侵入手段のもう1つは地中から。働き蟻が巣から地下トンネルを掘り進み、玄関や勝手口または風呂やトイレから雨水や漏水に洗われて地中に浸み込んだ木の匂いを頼りに辿り着き、住宅内へと侵入します。

 

住宅の敷地内に水はけの悪い場所があったり、雨漏りや水漏れがあったりすると羽アリの飛来侵入や働きアリの誘引侵入を促してしまうため、これらの問題が生じている場合は特に警戒が必要です。

 

 

 驚異の繁殖力! ヤマトシロアリとイエシロアリの底力

ひとたび住宅に侵入するとそこは一年を通して暖かく、餌が豊富で、天敵も少ない、まさにパラダイスです。
ヤマトシロアリは巣の中枢部ごと住宅内に引っ越して繁殖を加速します。5百頭ほどの創設巣は引っ越しからわずか3年足らずで4万頭を超える大家族を構成します。家族の中には生殖行動を禁じられている働きアリ階級からそれを許される生殖階級へ下剋上する選ばれし者がおり、有事の際はそれら精鋭部隊が家族を再生します。このため駆除施工が中途半端だと返り討ちに遭うため厳重な注意を要します。この階級分化能力はイエシロアリにはないヤマトシロアリならではの生存戦略の一つであり、その繁殖能力の高さから生態を知らずして駆除することは困難です。

 

イエシロアリは創設巣を拠点に至近距離で女王の産卵環境から育児環境、温湿度環境から巣の防衛に至るまで緻密に設計された要塞と呼ぶに相応しい巨大な巣を構築し、ヤマトシロアリと同様、数年で10万頭の大家族をつくります。近年は、比較的早期の駆除や予防対策などにより大きな巣を見る機会は減りましたが、ほんの十数年前までは畳2畳分もの大きさの巣が床下から出てくることもあったのです。イエシロアリにはヤマトシロアリのような階級分化はできませんが、分巣(ぶんす)と呼ばれる小要塞を中継地点に構築することができるため、加害範囲はより広範囲に及びます。加害場所の温度環境が30~35℃に達すると加害速度はヤマトシロアリの倍にまで加速し、より短期間で大きな被害をもたらします。九州地方でたびたび新築や築浅の住宅で建て替えるほどの甚大な被害を引き起こしているのは、このイエシロアリなのです。

 

 

 シロアリ対策は、早期発見・早期駆除よりも予防が大切です。

シロアリを今までに一度も見たことがない人はたくさんいます。それもそのはず、シロアリの羽アリが飛来するのはわずか数日ほどですし、働きアリは地中から忍び寄るので当然です。日頃から気を付けていなければ目にも留まりません。
シロアリ被害の前兆は前述の空と地中の侵入ルートを点検することでおおむねリスクを判断できますが、この早期発見は実際にやってみると意外と難しいのです。シロアリ被害の兆候は次の様な症状が段階的に進行することで判断することができます。

 

1)最近、床や柱からピシッと音がする
2)床がギシギシきしみ始めた
3)ドアの立てつけが悪くなった
4)柱と壁の隙間から砂粒や木くずが落ちてきた
5)柱や壁に筋状の土が付いている
6)窓際に虫の翅が落ちていた
7)室内で前後つながって歩く虫を見た

 

この中で「早期発見」に該当するのは1)のみで、2)以降は相当の改修工事を必要とする段階にまで被害が進行しています。
このようにシロアリを早期発見して早期駆除することは大変難しく、あらかじめ羽アリの飛来侵入と働きアリの誘引侵入を阻止すべく各々の住宅に応じた予防措置を講じることが大切です。

 

 

 床下は土間とべた基礎のどちらが安全?

床下をくまなく点検できる構造にして乾燥した環境に保つことができれば、どちらでも大丈夫です。
床下の基礎高を十分に確保して、神社の様に乾燥した床下環境を構築できるのであれば、土間でも安全です。この場合はむしろべた基礎よりも点検しやすく、土着の天敵生物を意図的に住まわせて高度な生物的防除を行うことも可能ですし、薬剤処理もしやすく強固な防蟻施工を施すことも可能です。寺社仏閣が数百年の時を経ても健全に維持できている理由がここにあります。

 

べた基礎は床下の基礎高が少々低くとも比較的点検しやすく、シロアリがトンネル通路を構築した際にも発見しやすいことから管理の簡便性は高いです。ただし、基礎断熱を施していたり、地震による亀裂が無数に生じていたりする場合は、むしろシロアリ発見の難易度は著しく高まり防除も困難を極めます。
シロアリ対策の視点から見た床下の安全性は、土間であってもべた基礎であっても一定の条件があり、工法よりもメンテナンス性の高さをいかに確保するかが重要です。

 

 

最後までご一読くださいまして、ありがとうございました。

 

 

 

 


 


pagetop